「デスクワークをしていると首から肩が重くなる」
「肩を揉んでも、しばらくするとまた凝ってくる」
「肩こりには筋トレがいいと聞いたけれど、何を鍛えればいいの?」
このような疑問を持っている方は多いのではないでしょうか。
肩こりがあると、まずマッサージやストレッチを思い浮かべる方が多いと思います。
しかし、身体の状態によっては、筋力トレーニングや身体を動かすことが肩こり対策の選択肢になるケースがあります。
実際、首や肩の症状を持つオフィスワーカーを対象とした研究では、首・肩周囲の筋力トレーニングを行ったグループで、首や肩の痛みが軽減したことが報告されています。
ただし、
「肩こり=筋力不足」
「背中を鍛えれば肩こりが治る」
と単純に考えることはおすすめできません。
今回は、K2 STYLE FITNESSでパーソナルトレーナーとして活動する理学療法士・森野秀明が、肩こりと筋トレの関係や、実際に身体のどこを確認しているのかを解説します。
回答:森野秀明 理学療法士(国家資格)・パーソナルトレーナー
結論|肩こりに筋トレが役立つケースはあります
私は、肩こりがある方にとって筋力トレーニングや運動が役立つケースは多いと考えています。
特に、
- 長時間同じ姿勢で仕事をしている
- デスクワークが多い
- 日常的に身体を動かす機会が少ない
- 首や肩に力が入りやすい
- 肩甲骨周辺をあまり動かしていない
といった方では、身体を動かす習慣を取り入れることが選択肢になります。
日本整形外科学会でも、肩こりに関係する要因として、首や背中が緊張する姿勢、前かがみ姿勢、運動不足、精神的ストレス、長時間同じ姿勢を続けることなどが挙げられています。
そのため私は、肩だけを揉んだりほぐしたりするのではなく、
「なぜ首や肩に負担が集中しているのか」
を身体全体から確認することが重要だと考えています。
肩こりは「筋力不足だけ」が原因ではありません
肩こりがあると、
「背中の筋肉が弱いからだ」
「姿勢が悪いからだ」
と思われることがあります。
しかし、肩こりにはさまざまな要素が関係します。
日本整形外科学会でも、肩こりには姿勢、運動不足、精神的ストレス、長時間同じ姿勢を続けることなど複数の要因が挙げられています。
私がK2で肩こりの相談を受ける場合も、筋力だけを見ることはありません。
例えば、
- 肩甲骨がどのように動いているか
- 胸や背中が動かしやすいか
- 首を無理なく動かせるか
- 呼吸するときに肩がすくんでいないか
- デスクワーク中に身体を固めていないか
- 運動中に必要以上に力んでいないか
などを確認します。
一つの原因を探すというより、肩に負担が集中しやすくなっている要素を一つずつ確認するイメージです。
私が肩こりの方で確認する3つのポイント
1.肩甲骨の動き
最初に確認することの一つが、肩甲骨の動きです。
腕を上げたり下げたりするときは、腕だけが動いているわけではありません。
肩甲骨も腕の動きに合わせて動きます。
そのため私は、
「肩甲骨を寄せられるか」
だけではなく、
腕を動かしたときに肩甲骨がどのように連動しているかを確認します。
肩甲骨を無理に寄せたり下げたりすることが正解とは限りません。自然に腕と肩甲骨が動かせているかを見ることが大切です。
2.胸・背中・首の動き
次に確認するのが、胸や背中、首の動きです。
デスクワークなどで長時間同じ姿勢が続いている方では、仕事中に身体を動かす機会そのものが少なくなっていることがあります。
このような方に、
「姿勢を良くしてください」
「もっと胸を張ってください」
と伝えるだけでは、うまくいかないことがあります。
胸を張ろうとして、胸ではなく腰を強く反ってしまう方もいるからです。
私は、胸や背中がどの程度動くのか、首を左右や上下へ動かしたときに違和感がないかなども確認します。
3.呼吸と肩の力み
もう一つ私がよく見るのが、呼吸です。呼吸そのものを「肩こりの原因」と判断するわけではありません。
見るのは、
呼吸するときや運動するときに、必要以上に首や肩へ力が入っていないかです。
例えば、本人はリラックスしているつもりでも、
- 息を吸うたびに肩が大きく上がる
- 筋トレ中に息を止める
- 力を入れるたびに肩をすくめる
という方がいます。
こうした力みがないかも、私は動きを見るときの参考にしています。

デスクワークと肩こりは関係する?
長時間のデスクワークも、肩こりに関係する要素の一つです。
日本整形外科学会でも、首や背中が緊張する姿勢や、長時間同じ姿勢を続けることが肩こりの要因として挙げられています。
ここで私が大切だと思っているのは、
「完璧な姿勢をずっと維持する」ことではありません。
よく、
「猫背にならないようにずっと胸を張っておこう」
「肩を下げたまま仕事をしよう」
と考える方がいます。
しかし、それでは別の場所に力が入り続けることがあります。
私は、同じ姿勢を長時間固定しないことの方を意識してほしいと考えています。
時々立つ。
肩を回す。
姿勢を変える。
少し歩く。
このように、仕事の中で身体を動かす機会を作ることも大切です。
長時間の座り仕事では、肩や首だけでなく腰に負担を感じる方もいます。座っていると腰がつらくなる方は、「座り仕事で腰が痛い人は何を鍛える?」でも、姿勢の考え方や自宅で行いやすい運動を解説しています。
肩こりの人が筋トレするときによくある間違い
最初から重い重量を使う
肩こりがあるからといって、「背中を強くしなければ」と、いきなり重い重量を扱う必要はありません。
私が初心者の方を見ていると、重量が重すぎる場合、
- 肩がすくむ
- 息を止める
- 腰を大きく反る
- 腕の力だけで引く
- 身体を振って動かす
といった代償動作が出ることがあります。
身体を鍛えることが目的なのに、重量を動かすこと自体が目的になってしまうケースです。
私はまず、自重や軽い重量で無理なく動かせることを確認してから負荷を上げます。
特に筋トレを始めたばかりの方は、最初から重量を追う必要はありません。運動経験が少ない方がトレーニングを始めるときの考え方については、「40代女性が筋トレを始めるときのポイント」でも詳しく解説しています。
「肩を絶対に下げる」と力み続ける
肩がすくんでいると言われた経験がある方ほど、「肩を下げておかなければ」と意識しすぎることがあります。
しかし、ずっと肩を下げることに力を使っていては、それも身体を固定することになります。
私は、
肩を下げた姿勢を作ることより、必要に応じて自然に動かせること
を重視しています。
胸を張りすぎて腰を反る
「姿勢を良くしよう」と思って胸を張った結果、お腹が前へ出て腰だけが大きく反ってしまう方もいます。
良い姿勢は、胸を張れば張るほど良いというものではありません。
私は、胸を張ったときに、
- 腰が強く反っていないか
- 肋骨が大きく前へ開いていないか
- 肩がすくんでいないか
- 呼吸できているか
なども一緒に確認します。
胸を張ろうとすると腰が反ってしまう方は、肩だけでなく骨盤や体幹の使い方も確認したいポイントです。「反り腰の人は腹筋をしてもいい?」では、反り腰と腹筋運動、呼吸、肋骨、体幹の考え方を詳しく解説しています。

初心者でも行いやすい「肩甲骨回し」
肩こりが気になる初心者の方に、私が提案することがある簡単な運動が肩甲骨回しです。難しい器具は必要ありません。
肩甲骨回しの方法
- 左右の手を、それぞれ同じ側の鎖骨付近に軽く当てます。
- その状態から肘で円を描くように動かします。
- 腕の先だけではなく、肩甲骨周辺も一緒に動いていることを意識します。
- 痛みのない範囲でゆっくり回します。
大切なのは、どれだけ大きな円を描けるかではありません。自分の肩甲骨がどのように動いているかを感じながら行います。
肩甲骨回しで注意してほしいこと
私がこの運動を指導するときは、
- 痛みを我慢して大きく回さない
- 勢いをつけない
- 腕先だけで回さない
- 首や肩を必要以上に力ませない
- 息を止めない
という点を確認します。
痛みが出るところまで無理に動かす必要はありません。
「大きく動かせる=良い運動」ではないと考えてください。

ストレッチと筋トレ、どちらをすればいい?
「肩こりなら筋トレとストレッチのどちらがいいですか?」という質問もよくあります。
私は、どちらか一方だけに決める必要はないと考えています。
実際、慢性的な首の痛みを持つオフィスワーカーを対象としたランダム化比較試験では、首・肩周辺のストレッチを行ったグループで、痛みや首の機能などに改善が認められました。
一方、首・肩周囲の筋力トレーニングについても、オフィスワーカーの首・肩の痛みを軽減した研究があります。
そのため、
ストレッチか筋トレか
ではなく、
- 必要に応じて身体を動かす
- 動かしにくい部分を確認する
- 軽い負荷から筋力トレーニングを行う
- 同じ姿勢を長時間続けない
といった方法を身体の状態に合わせて組み合わせることが大切です。
肩こりがあるとき、筋トレを休んだ方がいい?
肩が少し重い、張っているというだけで、すべての筋力トレーニングを中止しなければならないとは限りません。
ただし、
「いつもの肩こりだろう」
と自己判断してはいけない症状もあります。
私は、次のような症状がある方には、トレーニングを頑張るより先に医療機関への相談をおすすめします。
- じっとしていても強く痛む
- 痛みが急速に悪化している
- 腕から手先に強いしびれがある
- 手や腕に力が入りにくい
- 感覚が鈍くなっている
- 強い痛みによって日常生活に支障が出ている
頚椎症性神経根症などでは、肩から腕にかけての痛み、手指のしびれ、筋力低下や感覚障害などが生じることがあります。
このような症状がある場合は、筋トレで何とかしようとせず、まず医療機関で確認してもらうことを優先してください。
肩の痛みと一緒に胸の圧迫感や息苦しさがある場合は注意
肩の痛みがあるからといって、心臓の病気というわけではありません。
ただし、心筋梗塞では胸だけではなく、肩、背中、腕、首、あごなどに症状が広がることがあります。
特に、
- 強い胸の圧迫感や締めつけ
- 息苦しさ
- 冷や汗
- 強い胸痛
- 意識が遠のく
などを伴う場合は、「肩こりだろう」と判断して運動を続けないでください。
日本心臓財団では、息苦しさや冷や汗を伴うような強い胸痛など、心筋梗塞を疑う症状が出た場合には、自分で医療機関へ向かわず119番通報するよう案内しています。
K2では肩だけを見るのではなく、身体全体の動きを確認します
K2 STYLE FITNESSで肩こりが気になる方を担当するとき、私はいきなり筋力トレーニングから始めるわけではありません。
まず、
- 姿勢
- 肩甲骨の動き
- 胸や背中の動き
- 首の動き
- 呼吸
- 肩のすくみ
- トレーニング中の力み
- デスクワークなどの日常生活
を確認します。
そのうえで、
「今の身体なら、どの運動から始めるのがよいか」
を考えていきます。
肩がこっているから肩だけを鍛える。
猫背だから背中だけを鍛える。
というように、一部分だけを見てトレーニングを決めることはしていません。
身体全体の動きを確認しながら、その方が無理なく行えるところから段階的にトレーニングを進めます。
香芝市・五位堂周辺で「肩こりがあるけれど運動したい」という方へ
「肩こりがあるけれど筋トレしていいのか分からない」
「ジムへ行っても何をすればいいのか分からない」
「肩や首に不安があるので、いきなり重い筋トレをするのが怖い」
このような方もいると思います。
私はK2 STYLE FITNESSで、運動初心者や身体に不安がある方に対して、姿勢や身体の動かし方などを確認してからトレーニング内容を提案しています。
身体に不安があるから運動を諦めるのではなく、
「今の身体なら何から始められるのか」
を一緒に確認するところから始めてみてください。
※K2 STYLE FITNESSでは、病気やけがの診断・治療などの医療行為は行っていません。症状によってはトレーニングよりも医療機関への相談を優先していただく場合があります。
よくある質問
Q1.肩こりには筋トレが効果的ですか?
肩こりがある方に、筋力トレーニングや運動が役立つケースはあります。首や肩の症状を持つオフィスワーカーを対象とした研究でも、首・肩周辺の筋力トレーニングによって痛みが軽減した例が報告されています。ただし、肩こりの背景は人によって異なるため、「筋トレさえすればよい」という意味ではありません。
Q2.肩こりには背中を鍛えればいいですか?
背中の筋力トレーニングが役立つ方もいますが、背中だけを鍛えればよいとは限りません。
私は、
- 肩甲骨
- 胸や背中
- 首
- 姿勢
- 呼吸
- 日常生活
なども確認します。
身体全体を見たうえで必要な運動を選ぶことが重要です。
Q3.肩こりがあるとき、重い筋トレをしても大丈夫ですか?
最初から重い重量を使う必要はありません。重すぎる重量では、肩をすくめる、息を止める、腰を反るといった代償動作が出ることがあります。私はまず軽い負荷で動きを確認し、その方が安定して行える範囲から徐々に負荷を調整します。
Q4.デスクワークによる肩こりにも運動は役立ちますか?
運動が役立つ可能性があります。オフィスワーカーを対象とした研究では、首・肩周辺の筋力トレーニングやストレッチで症状が軽減した例があります。
ただし、運動だけではなく、長時間同じ姿勢を続けないことも大切です。
Q5.肩こりと一緒に手がしびれる場合も筋トレしていいですか?
強いしびれや筋力低下などがある場合は、自己判断でトレーニングを続けることはおすすめしません。
頚椎症性神経根症などでも腕や手指のしびれ、筋力低下などがみられることがあります。
症状が続く、強くなる、力が入りにくいといった場合は医療機関へ相談してください。
医療に関する注意事項
この記事は一般的な運動・身体づくりに関する情報提供を目的としたもので、病気やけがの診断・治療を目的としたものではありません。
強い痛み、症状の悪化、手足のしびれ、筋力低下などがある場合は、自己判断でトレーニングを継続せず医療機関へご相談ください。また、強い胸痛・胸部の圧迫感に息苦しさや冷や汗などを伴う場合は、緊急性のある疾患の可能性もあるため、速やかな対応が必要です。
参考資料
- 公益社団法人 日本整形外科学会「肩こり」
- 公益社団法人 日本整形外科学会「頚椎症性神経根症」
- Andersen LL, et al. Influence of frequency and duration of strength training for effective management of neck and shoulder pain: a randomised controlled trial.
- Andersen LL, et al. A randomized controlled intervention trial to relieve and prevent neck/shoulder pain.
- Tunwattanapong P, et al. The effectiveness of a neck and shoulder stretching exercise program among office workers with neck pain: a randomized controlled trial.
- 公益財団法人 日本心臓財団「心筋梗塞について 患者さんとご家族のためのQ&A」



